Version: 0.2
Last Updated: 2004-09-16
Debian Project の開発者を対象としたテクニカルカンファレンス。 今回で公式通算5回目の開催。 Debconf4公式サイト。
前回の debconf3 はノルウェーのオスロにて開催。詳しくは、 鵜飼氏の資料を参考のこと。
本カンファレンスには、基本的にDebian開発者のみが参加可能である。 他には今回のカンファレンスのお手伝いや、つきそい人などDebianやLinuxに興味を 持つ人が参加。 debconf4 の参加者総数はおよそ120人程度であった。
参加者の世界分布地図。世界中に開発者が散らばっている。 北米・ヨーロッパからの参加者がやはり多い。アジア系他はかなり少なかった。 日本の開発者として参加したのは、武藤健志氏 (kmuto)、上川純一氏 (dancerj)、私 (gotom) の3人。
ポルトアレグレ (Porto Alregre: POA) は、ブラジルで最も南にある リオ・グランデ・ド・スール州 (Rio Grande do Sul) の中心都市。人口およそ130万。 ポルト(港) とは言うものの、実際は広大なパトス湖に面している。
日本からはVarig Brazil航空を使用し、次の経路で行く。
飛行機に乗っているだけで合計約24時間、トランジット(4~5時間) や搭乗待ち時間(3時間)、空港までの移動時間(3時間) を含めると片道およそ35時間、往復3日かかる。
debconf4 の開催地は緑に囲まれた広い敷地の SESC という施設。空港から20分ほどの距離にある。
会場で講演に聞き入る聴講者達。説明の途中でもバンバン質問が飛び、皆アクティブである。 聞きながらハックをする人も多い。
会場には、併設して食堂、ハックルーム、debian-installerラボ、その他作業用の小部屋が用意されており、 いつでも皆思い思いのDebianハックに励める。会場内は無線LAN完備。 カンファレンス期間は対外線としてADSL*2+CATV*1 (ロードバランス)が用意され、速度もそれなりに出る。 Debian パッケージはローカルサーバにミラーしてあり、作業に支障ない。
私の泊まった部屋。会場は寝室とそのままつながっているため、合宿状態である。
前回の debconf3 までは debcamp (ハックキャンプ) と debconf (カンファレンス) が別々であったが、今回は一緒になった。
また、debconf とは直接関係ないが、debconf4 の後に FISL を同じ会場で開催していたようである。
詳しい日程はdebconf4 Activities Schedule にある(以下のスケジュールはこれを表にしたもの)。 詳しい内容については、「参加報告 (カンファレンス紹介編)」と 「参加報告 (観光編)」をどうぞ。
日付 | 内容 |
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5/26 (Wed)(レポート) |
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5/27 (Thu)(レポート) |
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5/28 (Fri)(レポート) |
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5/29 (Sat)(レポート) |
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5/30 (Sun)(レポート) |
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5/31 (Mon)(レポート) |
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6/1 (Tue)(レポート) |
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6/2 (Wed)(レポート) |
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debconf の魅力は、普段のメールや IRC とは異なり、参加者と直接口頭で議論できる点にある。 私も拙い英語ながら色々と議論する機会があった。
tg3, qlogic などのカーネルドライバには、バイナリファームウェアが含まれている。 最近、これが GPL 違反ではないかという議論が Debian 内部でずっと続いている。 いやらしいところは、これらのドライバファイルは 16進数の羅列がかかれており、GPL で言うソースのない状態なのだが、ファイル自体は GPL と明記してある。
Andreas Schuldei (stockholm) 自身は、ドライバはユーザ利便性のためには含めるべきと考えているが、 ソースがないため点に多大な懸念を抱いていた。 想像以上に Debian 開発者はこの問題を深刻にとらえていた。
Roland Stigge は、画像フォーマットは PNG → SNG (ソースコードっぽい形式) 変換ツールがあるので、同様にソースコードとして扱えるのではないかとの意見。 DFSG (Debian Free Software Guideline) にはこれらデータに関する細かい規定がもっと必要なのかもしれない。
これまで Debian のカーネルをメンテナンスしていた Herbert Xu が最近メンテナンスを辞めたため、新たに Debian kernel team が結成されている。私もそこに参加しているためあちこちでこの話しが出た。
Jeff Bailey (jbailey), Matthias Klose (doko), Guido Guenther (guido) に 加えて James Troup (elmo) も参加して、sarge 以降の ABI 動向について議論。
sarge 以降だけで次のアーキテクチャのABIに何らかの変更要因がありそうである (最悪バイナリ非互換もありうる)
韓国人開発者 Changwoo Ryu と文字コードに関して議論している間に思いついたプログラム。 開発中。
Debian Project 現リーダ Martin Michlmayr (tbm) や上川純一氏と Debian Projectのリリースを妨げているRC bugについて議論。 tbm は、MIA対策と同様何か戦略的に動かす仕組みが必要だとコメントしていた。
日本に帰国した後も、GNOME メンテナ田郷氏や mozilla メンテナの北目氏などから 現行の BTS に関する問題点を多く聞いた。 Debian のリリースサイクルの遅さは有名だが、それを解決する肝は BTS にあるかもしれない。
前回 debconf3 で私に発表を頼んだ Simon Richter から質問があった。彼は端末で Unicode を入力したいらしいのだが、X を使用しないで入力する方法がなくて困っていた。 screen-uim/uim-fep や IIIMF 対応端末という手がありそうだが、これといった解はいまのところなさそうである。
なお、写真は Simon ご自慢の(改造)Amiga。
glibc locales メンテナンスを行なっている Petter Reinholdtsen (pere) と議論。 彼のページが色々更新されている。 どうやら ISO/IEC 14652 が TR であるために、そこで採り入れられている first_week が controversial (議論中) であることが Ulrich Drepper がいやがってまだ入ってないということで困っているようであった。
また、d-iチームの Christian Perrier と Bug#248377, locales: Wrong thousands_sep value in fr_FR locale を議論。 これは、fr_FRロケールのthousands_sepratorが、0x20 (space), 0xa0 (non break space), colon のどれかはっきりしない問題である。 また、キプロス諸島ではギリシャ・トルコの両住民の政治的対立があるが、 片方のロケールだけなくてまずいのではないかという問題についても議論。
IBM から Christopher Yeoh が来ており、ppc64 サポート状況について gcc メンテナ Matthias Klose を交えて話しをした。 最終日の最後だったので、途中で時間切れになり私は飛行場へ向かうはめに。
Jeff Bailey と snapshot パッケージについて議論。 James Troup も交えて話しをする。彼は experimental にも buildd を適用したいとのこと。 IRC 越しに Daniel Jacobowitz (drow) も交えて glibc-snapshot がいいか、いやそのままでいくか、などを話す。
ブラジルではトイレに紙を流さないのが常識。紙質が悪くてつまってしまうため。
拭いた紙は備え付けのゴミ箱に捨てる(拡大写真は一部ボカシが入ってます)。
ポルトガル語で、氷なし炭酸なしミネラルウオーターは 「アグアミネラル セム ガス セム ジェル」と言う。 間違えると氷入り・炭酸入り、果てはコーラが出てくる。
この地方のコーヒーは味が濃く、またクセが強い。
ホテルで食事していたので現地料理はほとんどわからなかったが、大味で少し苦手だった。 武藤氏によれば、辛くないとのご意見。 上川氏によれば、サンパウロのシュラスコは柔らかく、ポルトアレグレのそれは筋張っていて豪気なところが特徴らしい。